釘と屏風

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”釘と屏風”は3人組の文芸ユニットです

【雑記】鹿児島モダン文学YAKATAで詩のワークショップー詩人の三角みづ紀氏とクラウン・ペペ氏

鹿児島モダン文学YAKATAで詩のワークショップー詩人の三角みづ紀氏とパフォーマーのクラウン・ペペ氏

 

キッチンのテーブルに座り

とろけた蕪を胃におさめて

お母さんみたいに

彼を抱きしめたい

生まれたての子が

お腹のスープから

出てくるときみたいに。

 

三角みづ紀「スープ」

『よいひかり』より一部抜粋ナナロク社、2018.8

 

 

よいひかり

よいひかり

 

 

 

突然だが昔、人に話すとひかれるくらいにaikoが好きだった。あれは高校1年の夏、部活を辞め、中退してもっかい入試受けるかー、と夢想していた頃。田舎の工業高校生だった私は、勉強に精を出すでも何かに没頭するのでもなく日々男臭い教室に身を投じ、ギャルゲーに興じる日々を過ごしていた。

ある日のこと、何気なくネット(私のいた工業高では一日6時間ネットサーフィンの授業があった)を見ていると、なにやらaikoという歌手がベスト盤を出すことになったと知る。高校生ながら日雇い人夫さながらであった私は、その辺の同世代より金を持っていた。なので買った、aikoのベスト盤。そしてブチ上がった。aikoのラジオが面白すぎて、私は思った。

「音楽業界に入ればこんなに面白い人と友達になれるかもしれない」と。

そしてキーボードを触りギターを買って作詞を始め携帯の待ち受けがビートルズからaikoに変わり女の子にキモいキモいと言われるようになったのであった。

 

・・・前置きが長くなったが、この前詩のワークショップに行った。最高だった。時間は止まっていた。ブチ上がった。隔絶されていた。

 

手紙を書くように詩を書く

 

コンセプトは手紙を書くように詩を書く、だ。 

 

導入として、クラウンぺぺ氏のパフォーマンスがあった。割とシぃんとした中でのパフォーマンスであったが、会場の熱も徐々に高まり、和やかなムードとなった。私はこのイベントを通して氏を知ったのだったが、すっかりファンになってしまった。なんというか、トムとジェリーを見ているような、懐かしい心持ちになった。下にリンクを。個人的には、ワークショップ中に参加されていたお子さんにアクションをかけているところがなんだか印象的だった。下記にリンクを

 

志免大道芸フェスティバル2014・クラウン ペペ - YouTube志免大道芸フェスティバル2014・クラウン ペペ - YouTube

 

さて、詩のワークショップである。拙いながらも詩作に励む人間としてはこれは参加せねばと思い参加した。企画を知った時は興奮したものだった。簡単に内容の紹介を。

 

①自分の好きなヒト/モノに対して手紙を書く。

②その手紙をもらったヒト/モノになったつもりで手紙の返事を詩で書く

③自作の朗読

 

という至ってシンプルな内容だった。

 

別所では、東京タワーに向けて書いた人なんかもいたらしい。好きなものだったら何でもいいのだ。この日は自分の仕事に対して書いてる人もいた。面白い発想だなぁと思ったりした。

書いた手紙は、封筒に入れて誰にも見せずにしまっておく。私は、発表される詩を聞きながら「この人はどんな手紙を書いたのだろう」と思いながら朗読を聞いていた。

ちなみに私は古い友人に向けて書いた(と恥ずかしくて言ってしまったが、本当は別の人に宛てた。そういう人は他にもいたかもしれない)。

 

以下、拙作。

 

サイズの合っていない

数年前の色を

塗りこまれた、

ドレス。

・・・・・・。

 

先端の真っ青で、

丸みを帯びた

甘いナイフ

船艇で、

放っ、た。

(もう知ることのない、海水の) ・・・・・・。

 

離れたばかりの

コルセットは、

ぽつんと声をあげて

(ほほえんでいる)

(あそんでいる)

(ただれている)

溺れていく。

 

少しずつシワの

よりはじめるであろう

顔を

まんじりと見つめる

私の顔が

君の眼球の奥で、

シワをよせた。

 

イメージの羅列みたいな作品になった。詩人を志す者として、出来はよろしくないのかもしれないが、はじめての試みで書かれた詩だと思うと、ワクワクした。

 

ちなみに朗読するとき、めっちゃ噛んで恥ずかしかったのもいい思い出である。

 

しかし、皆さん朗読の上手いこと。

 

ちなみに、主催の三角さんはクラウン・ぺぺさんに向けて詩を書いたらしいのだが、当のクラウンさんによってその詩は花束になっていた。

 

何のこっちゃと思うかもしれないが、A4の紙に書いた三角さんの詩(この場合、受け取ったクラウンさんが書いた詩、と考えるべきか)が花束になった。そして子どもにあげてた。素敵なことじゃないだろうか。写真のないのが残念だが写真に収めるような光景でもないのかもしれない。ちなみに、私はその光景を見ていた。羨ましいだろっ!

 

おわりに

主催の三角さんは「詩を身近に感じてもらいたい」と大体そのようなことを仰っていた。

何もないところから書くのは難しくとも、「手紙」、しかも人に向けて書くのではなく、もらった人の気持ちになって書く。確かにこれなら書きやすい。というか楽しい。

鉛筆持って一人黙々と紙に言葉を綴るよりも、誰かに想いを馳せて書いた方が、ある意味考えることが多い(もちろん、一人無に向かって言葉を紡ぐことは素晴らしいし私は普段そっちだ)。

少なくとも、詩を一遍も書いたことのない人にとっては、書きやすいだろう。

会場の皆さん、とても楽しそうに詩を書いて朗読していた。詩を書くとはどちらかと言えば辛い行為と思っていた私にとって、中々考えさせられるものがあった。

主催の三角さん、クラウン・ぺぺさん両氏の少し浮遊している雰囲気も相まって、本当に素晴らしい空間だった。繰り返しだが、世間から隔絶されていた。

この場を借りて両名に感謝を。

 

・・・と言うわけで、詩作に一瞬でも興味を持たれた方は、是非一筆書いてみるのも、いいかもしれませんね。

 

aikoと友達になりたくてギター持って詩を書いている内に詩人を目指しいてました、というお話でした。ああ、思えば最初に書いた歌詞はラブレターみたいなもんだったのかもしれない。ふわふわ。

 

三角みづ紀さんが選評している、南日本新聞の読者文芸コーナーがあります。是非、投稿されて見てください。字数に規定があるのでご注意を。

読者文芸応募 | 南日本新聞 | 373news.com

 

 

文・左部右人