釘と屏風

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”釘と屏風”は3人組の文芸ユニットです

【詩】2018.8-2019.5-ネットに放った言葉の記録……とかSOREっぽくキメてMIる。YOI詩集とか(左部)

2018.8-2019.5-ネットに放った言葉の記録

 

左部右人です。

5月も終わり、6月に入りましたね。梅雨時です。私は長崎と鹿児島と北海道の6月しか知りませんが、九州は常時びっしょびしょです。対して北海道は平常運転、さして雨が降り続ける、ということもなかった、はず。

 

……鹿児島は湿度が高くなり、雨が降る日が続きます。

外に出るのも億劫、かといって長々と読書にふけるのも気が進まない。そんな時は、詩集を開きましょう! 最短一分で読めてしまいます。テレビCMの間にも読めてしまいます。更に、詩ってよく分からないので、一遍に対して長々と考え、読みを楽しむこともできます。コストパフォーマンス、最強!

 

ということで、大体1年くらいの間にネットに発表した詩をまとめました。

kakuyomu.jp

 

ほとんどは、詩の投稿サイトB-REVIEWに投稿したもので、こちらのサイトでも私の書いた詩を一覧で読むことが出来るのですが、他サイトに発表したものもあるので、まとめてみました。ネットへの投稿もやめようと思っていたので、記念です。

ネット詩からおすすめをいくつか

 

・るるりら「グリコのおまけ」

www.breview.org

 

・渡辺八畳「たったひとりで伸びていったクレーンへと捧げる詩」

www.breview.org

 

ネット詩の掲示板って面白くて、良くも悪くも誰でも参加出来るし誰でも感想を書けるし、一作投稿すれば大体レスポンスも返ってくるので、「詩を発表したい~」という方には結構おすすめです。有象無象が犇めいていますが、お近づきになりたくない人は避けてしまえばよいのです。

……それはそれとして、上にまとめた私の詩群の中から一遍。

 

左部右人「親父は暴走する列車に乗って」

拝啓、親父さま。

貴殿の乗り合わせた列車が

はみだしてしまわぬように、

羽虫を殺すのをやめました。

透明な蜻蛉の四枚の羽根が

貴殿の乗り合わせた列車の、

翼となってくれますように。

 

拝啓、お袋さま。

貴女の寄り添うたおとこが

ふりおちてしまわぬように、

羊を殺すのをやめました。

繊細な羊毛が幾重にも重なって、

おとこの骨身を包み込み

貴女の艶やかな髪の毛を、

おもいだしますように。

 

拝啓、親父さま。

暴走する列車の中で

貴殿のその哀しみを

切符とするのもいいでしょう。

 

拝啓、お袋さま。

貴女の忘却したおとこが

暴走する列車に乗って

記憶の果てを迷走しているのでしょう。

貴女もまた、

貴女の哀しみを綱として

暴走する列車に乗り込んでみるのもいい。

 

歎願、いたします。

私の手に入れた 透明な翼と、

繊細な羊毛も、

どうか持って行ってください。

きっと力になれるでしょう。

わたしは、

お二人の帰るただ一つの駅として、

いつまでも待っておりましょう。

暴走する列車の、懐かしい汽笛を。

 

ついでなのでおすすめの詩集を。梅雨時はたくさん本が読めるのです。

 

上に梅雨の話をしたので、ここ一年くらいの間に読んだ詩集の中でおすすめを一言で紹介してみます。

 

マーサ・ナカムラ「狸の函」

2018年度の中原中也賞(詩の新人賞)を受賞した作品です。

民話を幻想小説に仕立て上げて不条理を足して「良く分からない箇所」だけをピックアップして詩に仕上げました、と言った詩が押し込められた詩集。

選考委員の高橋源一郎氏曰く、「選考委員全員がノックアウト」されたらしいですね。圧勝だったそうです。 

 

狸の匣

狸の匣

 
岩倉文也「傾いた夜空の下で」

 2018年度ユリイカの新人に選ばれた詩人です。90年代後半誕生。

短歌と詩の冊子です。イメージカラーは青。情景より先に匂いが浮かんでくる詩集です。

傾いた夜空の下で

傾いた夜空の下で

 

 

最果タヒ『天国と、とてつもない暇』

谷川俊太郎以降で考えると、ぶっちぎりの人気を誇っている詩人です。

私も結構好きで読みます。デビュー当時の評価はその先鋭的な作風から低いものでしたが、徐々に人気を博し、今では大人気作家に。「愛」とか「好き」とか直接的な言葉を多用しますが「最果タヒがいつ恋愛について書いたのだろうか?」という評価もあるように、文字を意味を持ったただ一つの「記号」として配置しているように見えるのが特徴的。最果氏の作品で最も好きなフレーズは「君が私のことを好きなまま 他の誰かと幸せになると良い」(誤差があったらすみません)です。

天国と、とてつもない暇

天国と、とてつもない暇

 
 

 

おわりに

詩っていつでもどこでも読者にも作者にも評者にもなれる表現だと思います。私たちは常日頃から言葉や文字を使ってコミュニケートしています。点字や手話も言葉であり、文字です。詩は、誰にでも読める書ける感想も言えちゃいます。韻を踏んでも踏まなくても詩にはなります。定型詩もあれば自由詩もあるのです。やることなくて、暇。という方、詩に触れてみてはいかがですか。「誰にでも読める感想も言えちゃう」というところに横着して表現の幅を自ら狭めてしまわないよう、注意をしましょう。

ではでは。

 

※6月は祝日がないのでざんねんですが、がんばっていきましょう。